うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

翻訳語考。字義的に翻訳できないところ。

適当日本語比較論。少し日本語をたしなむ友人と小津の『秋刀魚の味』を見ていて、「なんだい?」っていうのはどういう意味だと尋ねられ、「だい」という日本語ならまったく何でもない二文字が字義的に翻訳できないことに気づかされた。そしてよくよく考えてみると、日本語のニュアンスの多くは語尾の微妙な調節によって生み出されているのではないか、という仮説に至った。自分の知る限り、こうした語尾によるヴァリエーション豊かなニュアンスの創出は西洋語にはあまりないように思う。ドイツ語では名詞に-chenを加えることでendearmentのニュアンスが出せたりするが、これは単語単位での微調整だし、その用途は限定的である。日本語はある意味、口頭パフォーマンスに依存しなくてもよい感情の機微の表記法を発展させてきたのではあるまいか。