うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

翻訳語考。All の別の訳し方、「つねに」または「例外なく」。

翻訳語考。All を、量的な「すべて」ではなく、時間‐頻度的な「つねに」や、条件的な「例外なく」にすり替えることは、どこまで許容されるだろうか。

All redistributive reforms face this challengeは、素直に訳せば、当然ながら、「あらゆる再分配的な改革がこの難題に直面する」。量的な修飾語を後ろに持っていくこともできる。「再分配的な改革すべてがこの難題に直面する」。

ただ、どちらにせよ、主語が長くなるし、「再分配的な改革」というフレーズが微妙に埋没する。そこで、主語をすっきりさせるために、「再分配的な改革はつねにこの難題に直面する」、または、「再分配的な改革は例外なくこの難題に直面する」としてみたい気にかられることがある。

意味はそこまで変わらないとは思うが、イメージは大きく変わる。「つねに」を使うと、時間軸をそれなりに長くとることになるだろう。つまり、これだと、たとえば、カードを5枚引いてそれを同時に検討するのではなく、毎回1枚ずつ引いていくような感じのイメージになるだろう。その一方で、「すべて/あらゆる」が5枚のカードすべてにフォーカスするという意味で、ある範囲「内」の状況を見るのにたいして、「例外なく」だと、範囲「外」というか、「内」と「外」の境界線に注意を払う感じになるはずである。

と書いてみたものの、結局いつも、「つねに」や「例外なく」ほど冒険する勇気はなく、「あらゆる」か「すべて」でうまくつじつまを合わせるのであった。