うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

Union を「連帯」と訳せるか

翻訳語考。Union を「連帯」と訳すのは踏み込みすぎだろうか。Labor union や trade union のような組み合わせなら「組合」とするのが妥当だけれど、a union of all men のような<集合>としての union はそれだとあまりにも色が付きすぎる感じもするし、そもそも、establishing peace and union のような<状態>としての union を「組合」とするわけにはいかない。リーダーズを見ると「結合、合体、合同、団結、合併、合一」がリストアップされているけれど、個人的にしっくりこない。

語源的に考えれば、union は 「 一(uni)」であるから、「統一」や「合一」のように「一」の文字が入っている単語のほうがいいのかもしれないけれど、強調したいのはそこではない。ひとつに「なった」というよりも、ひとつに「まとまっている」感じを出したいのだ。個が融解して、混然一体の状態に生成変化してしまっているのではなく、個が個のまま、多なる個がいわば暫定的に、可逆的なかたちで「ひとつ」を維持している状態を前面に出したい。

Unite という動詞のニュアンスを大切にしたい。「一」(「一」という状態)よりも「合」(「一」にする行為)を前面に出したい。しかし、たとえば「結合」や「連合」のように名詞化されると、ダイナミクスが薄れてしまうような感じもある。The United States の「合衆国」にしても、the United Kingdom の「連合王国」にしても、the United Nations の「国際連合」にしても、動画的というよりも、静止画的なものであるように感じられてしまう。

Unity とどう訳しわけるかという難問もある。おおざっぱに言えば、unity のほうが抽象性が高いということになるだろう。Union が unite している状態を指す言葉だとしたら、そのような状態をもう一段階抽出して、状態の性質を語る単語が unity であると整理しておきたい。しかし、この区別を日本語で表現するのは容易ではない。

当然ながら、「連帯」の定訳は solidarity だ。語源も違う。solidarity はラテン語の solidium ——「whole sum」(総計)——から来ているが、さらにさかのぼれば、「solid」(硬い)の意味。ただ、Wikitionary の solidarity の定義文には「A bond of unity or agreement between individuals, united around a common goal or against a common enemy, such as the unifying principle that defines the labor movement; mutual support within a group」とあるので、solidarity が unity - unite と地続きであることはまちがいない。

こう言ってみてもいい。Solidarity を定義するために unite 系列の単語群が要請されるかもしれないけれど、逆は必ずしも真ではない。Solidarity という単語を引き合いに出さなくても union は定義できる。

しかし、だとしても、union に solidarity を逆輸入してみたい。