うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

浜松の街を歩く。

浜松の街を歩く。子どもの頃から月一か二月に一度のペースで来てはいたから、街の勝手は体感的にはわかっていたけれど、あらためてぶらぶらしてみて、やっとはっきりと見えてきたこともある。

静岡市と比べると、浜松は商店街的なところまで遠いという印象があったけれど、これは正しいと思う。静岡市は、駅の真ん前に国道1号線が走っているため、商店街と駅が地下道を介してつながるため、その意味では断絶があるものの、その断絶は短い。浜松にはそうした分断はなく、駅から繁華街まで地上で道が続いていくが、その道がわりと長く、駅前商店街的なものがない。そのせいか、駅と商業空間がつながっていないような印象がある。

しかし、浜松駅にはメイワンという駅併設の商業施設があり、駅からすぐ出たところには遠鉄百貨店がある。静岡駅にもアスティやパルシェがあり、松坂屋があるという点では、浜松も静岡も似たようなものだけれど、地下道をとおって少し歩かなければならない点では、静岡駅周りは浜松よりコンパクトではない。

浜松のほうが駅前が開けているような印象もある。それはおそらく、遠鉄百貨店やホテルがあり、背の高いビルが駅周辺に林立しているからだろう。40階以上あるアクトタワーがすぐそばにそびえているのも、そうした印象を強める。静岡駅周りにも大きなビルはあるが、駅北口から見上げると、ランダムに立ち並ぶ林というより、道路沿いにそびえる壁だ。

浜松を碁盤の目状に走る道路は複車線で、道幅はかなり広い。その結果、道の両側に店がある通りでも、両方合わせてひとつというより、道のあちらとこちらでふたつの商店街があるという感じがする。

その一方で、大きな車道で四方を区切られたブロックの内部は歩行者フレンドリーで、道の両側の商店や飲食店がひとつのゾーンを形成している。小道もあり、裏通りという感じのスペースもある。それぞれのブロックがひとつの生態系をなしているようだ。相対的に自律したミクロコスモスの集積なのかもしれない浜松に比べると、静岡は街全体で棲み分けがなされているようだ。

浜松の交差点には基本的に地下道があるのは、道が広く、横断歩道が長いため、つまり、車優先の道で歩行者の待機時間を減らすとともに、歩行者の安全を確保するためだとは思うが、ブロック間の切れ目を強化するという心理的効果もあるような気がする。地下道は静岡にもあるが、基本的に駅前限定だ。

静岡のほうは街全体としてはコンパクトで、浜松のほうが街を構成する空間単位のサイズが大きい。それは街全体が栄えていたときは大きな利点だったはずだが、郊外ショッピングモールの隆盛によって繁華街が都市の磁場の源ではなくなった今、大きな弱点になってしまっているように見える。

スペースが広ければ、それを充たすために数が必要になる。広いスペースで隙間が出来てくると、全体として寂しい感じになってしまう。シャッター街とはまた違う意味で、浜松の街は寂しい感じがする。

小さな暖房器具で大きな部屋を暖めるのが難しいように、浜松の街がいま持っているエネルギーでは、大きなブロック一体を暖められないし、街全体となればなおさらのことだ。浜松のような街の場合、街のどこかに人が集まればそれで街全体が活性化するということはないように思う。その意味で、浜松は静岡よりマネジメントが難しいだろう。