うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。アメリカナイズされた中華。

アメリカ観察記断章。日本の中華料理が日本化されているように、アメリカの中華はアメリカナイズされている。アメリカの中華チェーンはある意味ではきわめてファーストフード的で――そういえば日本にはファミレスではない中華の全国的ファーストフード・チェーンはあるのか、餃子やラーメンではなく、中華一般を扱うファーストフードのことだ――どこのフードコートやカフェテリアでも必ずひとつは入っている。メニューのラインナップは日本と大きく異なる。日本で中華といえば、麻婆豆腐とか青椒肉絲とか回鍋肉とか八宝菜、餃子とか焼売あたりが定番だと思うけれど、アメリカのチャイニーズ・デリの一番人気はオレンジ・チキンで、それに続いて、ブロッコリービーフ、カン・パオ・チキン(日本でいうと鶏肉のカシューナッツ炒めだろうか)、豆腐とナス炒めもの(ベジタリアン用)あたりが普遍的な品だろう。豚肉メニューがないのはイスラムにたいする配慮だろうか(インドカレーのデリではチキンとラムとベジタリアンがデフォルトだ)。セットメニューの場合、チャーハンかチャウミンChow mein(白米や玄米、ベジタブルを選べる場合もある)をサイドディッシュとして、それに2品か3品メインを選ぶというのが基本形態である。チャウミンは油っぽい焼きそばといえばいいだろうか。どれもこれも濃厚なねっとりとしたソースが絡んでいる。アメリカの中華チェーンがテイクアウトを前提としてメニューを考えているからだと思う。