うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。中近東のプレゼンス。

アメリカ観察記断章。カリフォルニアを留学先に選んだ理由のひとつに、父が「東海岸より西海岸のほうにこそアメリカの未来が見えるのではないか」とこぼしたことにあることはすでに言及したけれど、実際南カリフォルニアに来て驚いたのは、アジアのプレゼンスではなく、中近東のプレゼンスだ。近所にWholesome Choiceというスーパーがある。そこにはインドから中近東からトルコの食材が揃っている。チーズの棚を見れば、インド系のチーズのパニールがあり、ヨーグルトの棚にはアメリカ資本のスーパーでは絶対に見かけない、英語とアラビア語表記のパッケージのものが並んでいる。ただ、これを「中近東」と呼んでいいかは、かなり疑問だ。たしかにアラビア語併記の商品が多いし、肉はハラール処理されている。しかしこれはアラブ的なものに還元できない広がりがあるようにも思う。興味深いのは、このスーパーが、「中近東」移民の集いの場であるらしいという点だ。スーパーには内にも外にもテーブルがしつらえられているのだけれど、そこで、すごろく(というか、アラブのテーブルゲーム)に興じている初老の男たちを見かける。商業空間は、同時に、コミュニティのための寄り合い所でもあるらしい。これはいまカリフォルニアにある日系スーパーが日系の人々にとってのミーティングポイントになっていないことを思うと、ますます注目に値する。ともあれ、南カリフォルニアにいると、エキゾチックなものを気軽に買えるのが楽しい。柘榴ひとつ150円なら、「まあ、試してみるか」という気分になるというものだ。