うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。Teriyaki。

アメリカ観察記断章。スーパーの棚を見ていると意外なものがポピュラリティを得ていて驚くことがある。Teriyakiがその最たる例だろう。カップ焼きそばの「Teriyaki Beef Flavor」というのは日本だとちょっとありえない気がする。日本の調味料、たとえば醤油などはどこのスーパーでも売っているが、味付け=flavorという意味ではTeriyakiの圧勝かもしれない。

今日最近すっかり行きつけとなった近所の中近東系のスーパーに行くと、中近東系の若い女性が「Yuzu ponzu」をかごに放り込んでいるのを見てびっくりしてしまった。そもそもそんなものがこのスーパーに売っていることが驚きだったし、それをいつも買っているかのように手に取る中近東系の女性にも驚いた。

しかし改めて考えてみると、日本料理(和食洋食含めて)の味付けのなかでアメリカで受けそうなのは、照り焼きのような濃厚な甘辛さか、ポン酢のような酸味系であることが見えてきた。実際、アメリカで自分の味覚のベクトルが変わったところをいくつか上げていくと、酸味を外すことはできない。ヴィネガーの種類はアメリカのほうが豊富だと思うし(バルサミコシェリー、リンゴなどなど、メーカーが豊富だし価格帯も幅広い)、何より柑橘類(レモン、ライム)が安い。アメリカの料理界で柚子が人気で、柚子胡椒などがあたかも日本の調味料の代表格であるかのように扱われているのは、個人的にずいぶん違和感があるが――柑橘類はあくまで薬味であり脇役であると思うから――日本とアメリカの味覚の違いを思うと、妥当なところなのかもしれない。

きわめて個人的な印象だが、日本の煮物の角のとれたまろやかさ、特定の味が突出するのではなく甘さ辛さが少し控えめなところで調和しているというのは、アメリカだとパンチが足りないのだろうなと思う。だからうどんやそばではなく、ラーメンがウケているのは、よくわかる気がする。