うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

観劇メモ

ふじのくに⇔せかい演劇祭2019、宮城聰演出、唐十郎『ふたりの女』

20190428@舞台芸術公演「有度」 面白そうなテクストであることはわかったし、興味惹かれる演出ではあったけれど、正直に言うと、入りこめない感じがした。それはもうほとんど直感的なもので、言葉を費やして言い訳するより、ただシンプルに「合わなかった」…

多田淳之介演出、芥川龍之介『歯車』

20181215@静岡芸術劇場 「貧しい」演劇の豊かさ 多田淳之介演出の『歯車』は「貧しい」演劇だった。内容が貧しかったという批判ではない。チープな道具立てでどこまで豊かな演劇を作ることができるかという実験ではなかったか、という問いかけである。それ…

猫の集会、三島由紀夫「班女」

20190224@やどりぎ座 元ネタ(能)、二次創作(三島)、二次²創作 三島の近代能楽集は、古典能のアップデートというよりは本歌取りというべきものだろう。人物や舞台設定、物語の筋書きを踏襲して、それを昭和的世界のなかにリライトする。しかしこのリライ…

ジャン・ランベール=ウィルド演出『妖怪の国の与太郎』

20190217@静岡芸術劇場 「墓場で運動会」な『地獄篇』死神エルメスが死者である与太郎を閻魔大王の前にまで連れていく。その道中で、彼らは死者や妖怪に遭遇し、妖怪たちの歓待を受ける。しかし、横槍も入る。「ほっぺたのように赤い」与太郎の魂のボールは…

チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』

20190202@世田谷パブリックシアター 切り離して繋ぎ変える 言葉、身体、音楽のつながりが作り変えられる。ここでセリフと所作は統合されておらず、身体の運動はキース・ジャレットの演奏するバッハ平均律とシンクロする。 冒頭、ハ長調のプレリュードとフー…

宮城聡演出、レオノーラ・ミラノ『顕れ』

20190127 @静岡芸術劇場 神話的構造 アフリカにおける奴隷貿易という負の歴史をめぐる物語ではあるが、劇自体は神話的構造を持っている。すべての生命の母であるイニイエのもとに、輪廻のサイクルを繰り返す魂であるマイブイエと、輪廻のサイクルから切り離…

芸術と感動(ブレヒト「芸術、あるいは政治?」)

「芸術そのものが人間の運命に揺り動かされないなら、どうして芸術が人間を感動させうるか? ぼく自身が人間の苦しみにたいして無感覚でいるなら、ぼくが書くということに、どうして人びとは胸をひらきえよう? その苦しみを抜けだす道をかれらのために発見…