うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

文字に縁のうすい人たち(宮本常一『忘れられた日本人』)

「文字に縁のうすい人たちは、自分をまもり、自分のしなければならない事は誠実にはたし、また隣人を愛し、どこかに底抜けの明るいところを持っており、また共通して時間の概念に乏しかった。とにかく話をしても、一緒に何かをしていても区別のつくという事がすくなかった。「今何時だ」などと聞く事は絶対になかった。女の方から「飯だ」といえば「そうか」と言って食い、日が暮れれば「暗うなった」という程度である。ただ朝だけは滅法に早い。/ところが文字を知っている者はよく時計を見る。「今何時か」ときく。昼になれば台所へも声をかけてみる。すでに二十四時間を意識し、それにのって生活をし、どこかに時間にしばられた生活がはじまっている。」(宮本常一『忘れられた日本人』。270頁)