うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

ネイティヴ・スピーカー、機械のスピーカー(多和田葉子『エクソフォニー』)

「日本の中学・高校での英語の授業で、たまに「ネイティヴ・スピーカーの発音を聞いてみましょう」ということがあった。その場合、ネイティヴ・スピーカーの声は必ずテープレコーダーから聞こえてきた。ネイティヴ・スピーカーとは機械のスピーカーのことだった。そのせいか、わたしは今でも機械から聞こえてくる声の中に、遠くからやってきた人間の声の不思議さを感じてしまうことがある。機械の性能は悪い方がいい。ぶつぶつという雑音のかなたから、途切れ途切れに聞こえてくるのがいい。」(多和田葉子『エクソフォニー』)