うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

20191226 Day 4 移動日に綴る間奏曲的な雑感。

カイロからアレクサンドリアまで列車で移動する。距離にして200キロぐらいらしい。いちばん速い列車で2時間半、遅いものだと3時間半近くかかるようだが、チケットは71EGP(日本円にして500円くらい)と格安ではある。

とりあえずここまではアラビア語が分からなくてもなんとかなってきたが、まさか駅という交通の要所でそこに初めて引っかかる。地球の歩き方にはざっくりとしか書いてなかったので、まちがえて手荷物検査を通って駅構内に入ってしまうが、チケット売り場はその外だった。人が並んでる外のボックスがそうかと思ったが、3つか4つ窓口があるボックスのうえにはアラビア語表記しかない。とりあえず並んで窓口で「First class, Alexandria」と叫んでみるが、「一等車のチケットはここじゃなくて中の方」と言われる。たしかに外のボックスから右手にすこし行ったところに、日本のみどりの窓口のような感じのもっときちんとしたブースがあり、頭上にはモニター式の時刻表がある(しかしこれもアラビア語表記)。そしてなかなか列が進まない。こうして予定の列車を乗り逃がすことになった。

地下鉄のチケットを買ったときにも思ったが、こういう窓口の対応をしているのは女性だ。どうにか英語が通じるが、互いにカタコトになってしまう。途中でよくわからなくなってきて、何を言っているのかと途方に暮れてしまうが、周りで待っていた人たちが――そう、列になって待っているのではなく、窓口を取り囲むように人が待っているのだ、いちおう一列に待つことを期待するかのように柵があるのだけれど――「1パウンドコインを出してと言ってるんだ」と教えてくれる。

窓口の女性がおつりを取りに行ってるあいだ、助けてくれた男性から「Chinese?」と聞かれる。中国人に見えたのか、それとも最近カイロの駅で見かけるのは中国人が多いからなのかは、そこは不明。

エジプトの支払いはわりとアバウトで、90.86EGPに100紙幣で払うと10返ってきたりする一方で、71に100紙幣を出してそこに20紙幣+9コインのおつりという細かさはないらしい。というか、実を言うと、列車のチケットは70.25だったのだけれど。

列車は意外と混んでいて、暑い。一等車だとエアコン付きだというのに、暑いなと思っていたが、走り出して少しすると途端に寒くなってくる。ちょうどよいということがない。

隣りの席の男性がずっとなにかつぶやいているが、もしかしてコーランを暗唱しているのだろうか。スーツを着たビジネスマンが少しいるが、ほとんど乗客はカジュアルな格好。女性客はほんのひとにぎり。

カイロとアレクサンドリア間にはいくつかの種類があって、車両が違うらしいが、停車駅の数も違うらしい。今日乗ったのは一番速く、一番停車駅が少ないものだと思うけれど、どこで停まるかよくわかっておらず、間違えて最終停車駅の前で降りそうになる。東海道新幹線に例えるなら、東京で降りなければいけないのに品川で降りそうになった感じ。というか、実際に降りてしまって、乗ったときに荷物を運んでくれた若者に聞こうとしたのだが、英語は通じない。降りてきた中年女性が「I can speak English」と話しかけてくれて、状況を理解し、もういちど列車に戻る。

この若者だけれど、普通の服なので、車両の前で話しかけてきたときはなんなのかと思った。しかしずっと列車に乗っていたし、駅では荷物を下ろすのをやっていたから、駅員関連なのかもしれないが、どうなのだろう。そういえば、トイレの前にもひとり男性がいて、トイレに入ろうとするとなにやら消毒液のようなスプレーを何拭きかしてくれる。彼らにチップというか喜捨をすると微妙に怪訝な顔をされる。しなくていいのか、したほうがいいのか、しなければいけないのか、その判別が難しい。

アレクサンドリア駅は、大きいといえば大きいが、まだ建築中という感じで、ホームには砂利の小山があったり、ちょうど小雨が降ったあとだったので黄土色にぬかるんでいたり、レンガ敷きのホームがところどころ陥没していたりと、きわめてローカルな雰囲気。そしてここでも英語は通じなさそうな雰囲気。

そして駅を出ると、タクシーの運転手の客引き英語が聞こえてくるし、何人ものドライバーが話しかけてくる。「Taxi? Good price!」

結論。英語は金を稼ぐことに真剣なところでしか使われない。金を稼ぐのに多少なりとも英語を話せたほうが有利なところでは英語でも最小限の用が足せる。英語の使用可能性は資本主義の論理(利潤拡大による資本の自己再生産と自己増殖)に忠実である。

f:id:urotado:20200112151452j:plain

f:id:urotado:20200112151638j:plain