うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

映像メモ

恋愛至上主義の最終的な肯定:「結婚できない男」(2006)

アマゾンプライムに入っていた「結婚できない男」をだらだらと見た。たしかに面白い。多少の中ダレはあるものの、シーズン終わりまで見させるだけの牽引力はある。しかし、見た後にあまり何も残らないのは、結局すべてが恋愛に還元されており、ありきたりの…

甘やかな惑星宿命論に身をゆだねる:新海誠『天気の子』(2019)

ポスト・エヴァとしての新海アニメ 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』にたいする返答として『天気の子 Weathering with You』を捉えてみると、セカイ系的物語世界とギャルゲー的プロット展開で新海誠の新作が取り扱おうとした責任感と罪悪感の問題がクリアに浮…

等価性の原理:フレデリック・ワイズマン『エクス・リブリスーーニューヨーク公共図書館』(2017)

20190616@静岡シネ・ギャラリー 変奏曲として、または多面性の表象 バッハの『ゴルトベルク変奏曲』の「アリア」がクレジットの入りとともに流れ出すとき、わたしたちは、このドキュメンタリーが変奏曲のようなものであったことに気がつく。同一主題の差異…

パーソナルな記録と告白の問題性:キャシー・ジェイ『The Red Pill』(2016)

20190512@常葉大学静岡草薙キャンパス 向こう側がどう感じているか コンセプトは決して悪くない。「向こう側」がどのように感じているか、真摯に知ろうとすること、それは重要なことだ。フェミニズムによって女性の社会的権利は拡大し、男女のあいだの不平…

ふじのくに⇔せかい演劇祭2019、ミロ・ラウ『コンゴ裁判』

20190427@グランシップ映像ホール 『コンゴ裁判』はノンフィクション・フィクションとでもいうべきドキュメンタリー作品である。登場するのはすべて実在の人物であり、誰もが本当の言葉で語る。600万人以上の死者を出した20年以上にわたる紛争のなか、第三…