うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2022-03-06から1日間の記事一覧

書かれなかったものを読む(ホフマンスタール「痴人と死」)

思えば人というものは、なんと不思議なものだろう。 解きあかすことのできなことも解きあかし いちども文字に書かれたことのないものも読み もつれたものを自由に結びつけながら さらに永遠の闇のなかで道を見出すのだ Wie wundervoll sind diese Wesen, Die…

与えることと受け取ることの非対称性(シュテファン・ゲオルゲ「苦悩の友 」)

惜しみなく己を与える人は受け取ることのなんと少ないことか Wer ganz sich verschenkt wie er wenig empfängt (シュテファン・ゲオルゲ「苦悩の友 [Schmerzbrüder]」『ゲオルゲ全詩集』136頁)

みずからの終末と向き合う人間の姿:マイリス・ベスリー『ベケット氏の最期の時間』(早川書房、2021)

マイリス・ベスリーの『ベケット氏の最期の時間』は、妻シュザンヌを亡くして介護施設に入ったサミュエル・ベケットが、いかにもベケットらしく、ベケットとして亡くなるまでの日々を過ごしていく様子を描き出す。 ベスリーは、医療関係者や介護人が綴る業務…