うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

20240319 ケベックシティ2日目午後。「王の娘」?

「王の娘」と呼ばれる貧困化した孤児の女性たちが、人口政策の一環としてーー男女比は男に偏っていたということだろうーー政府によってヌーヴェル・フランスに送られ、「北米におけるフランスのプレゼンスを確立するうえで大いに寄与した」と、国家側の論理で美談風に書いてあるけれど、実態はどうだったのだろう。ちなみにこの手の記念碑は関連した建物があった場所に置かれているのが普通なのだけれど、ここにはそういうものが見当たらないのもちょっと不思議なところ。

知り合いのカナダ人によれば、その多くは「娼婦」であったとのこと。学校の歴史の時間に教わることであり、カナダ人ならたいてい知っているらしい。

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20240319 ケベックシティ2日目午前中。ノートルダム教会とシタデル。

ケベックシティ2日目午前中。ここのノートルダム教会の創設者は17世紀の人物で、大西洋を7度横断し、この地に教会や神学校を建立するために尽力した人物だそうだ。建物自体は20世紀初頭のものだという。豪華ではあるが、どこか作り物めいた感じがあるのは、中途半端に新しい雰囲気があるせいで、セットのように感じられてしまうのに、宗教画は古めかしい感じになっているからだろうか。

と書きながら、自分にとって宗教は過去に属するものであるがゆえに、そこに近代的な美学が混入すると、アナクロニックに感じてしまっているのかもしれない、ということに気づいた。

(しかし、全く同じことを新たに建てられた伝統的寺院に感じるかというと、そうではなさそうな気もするし、現代的なギミックを取り入れた寺社仏閣にたいしても違和感は覚えなさそうではある。この差はどこに由来するものだろうか?)

シタデルはフランス人が築いた要塞をイギリスが接収し、現在は22連隊の駐在所となっている。ケベックシティのなかでもっとも高い位置にある。ツアーガイドでないと中は見られない。

ガイドの説明を聞き、博物館の展示を見ながら、いろいろと考えたこと。

・カナダはまず「Nouvelle-France」であった
・イギリスがカナダに侵攻してイギリスのものとなった
・それからわりと間を置かず、アメリカ独立戦争が起こった
・そのせいでカナダはアメリカから攻撃されている
・ところで、アメリカ独立戦争に影響を与えたのはフランス啓蒙思想だとすれば、この状況はなかなか皮肉ではないか
第一次大戦のとき、イギリスの統治下にあったカナダには参戦する以外の選択肢はなかったが、ケベック州の志願兵が相対的に少かったせいで、フランス系カナダ人(出自というよりも、フランス語話者であることによって定義される層)にたいする世間の風当たりがきつくなった
・参戦に乗り気だったのはイギリス系カナダ人であり、フランス系カナダ人はそうでなかったそうだが、それは、後者にとって、フランスは遠い過去の
・それに反発するように、フランス系カナダ人の志願兵がフランス語をメインとする連隊の創設を訴え、その結果、22連隊が発足する(この流れは、第二次大戦下における日系アメリカ人の苦境を想起させる)
・22連隊がシタデルを駐在所とするようになる
・現在も活動中で、古くは朝鮮戦争、近年ではアフガニスタン戦争に派遣されていた

それにしても、朝、「カナダ風」の朝食セットを頼んだところ、出てきたのは、イギリスでよく見る朝食のラインナップだったのが、ちょっと解せないところでもある。

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オスカー・ワイルドを思う

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なぜヤギなのかと思ったが、英国王室からの贈り物らしい。現在もヤギがこの連隊のマスコットであり続けているとのこと。

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カリフラワースープはいまひとつふたつみっつ。味が足りないし、旨味に欠ける。アメリカでクラムチャウダーを頼んだときのように、クラッカーが付いてきたのはわかるが、マーガリンの小さいやつも付いてきたのはなぜだろう。ともあれ、マーガリンを溶かすとスープはまずまずの味になった。Casse-Crêpe Breton にて。

食事系クレープだけれど、中途半端だった。ベシャメルソースがやはり味がなく、やたら多めに入っているマッシュルームを支えきれていない。というか、ベシャメルソースとマッシュルームをこんなにいれるなら、ハムが足りないだろう。とろけたチーズがソースと相まって口当たりをよくしているけれど、これまたチーズにあまり塩味がないので、バランスが悪い。クレープ自体は悪くないが、全粒粉のパンと同じく、素朴な味わいと引き換えに食感は犠牲になっている。というよりも、作っている方が、これをガレットのようなカリッとしたものにしたいのか、クレープのような柔らかなものにしたいのかが、最後までよくわからなかった。分量は多く腹が膨れた。Casse-Crêpe Breton にて。

 

20240318 ケベックシティ1日目夜。夜のライトアップ。

ケベックシティ1日目夜。夜になるとライトアップされている。また、暗くなってからでもまだ歩ける街だ。とはいえ商店は8時ぐらいには閉じてしまうし、レストランもそこまで遅くまでやっているわけでもなく、賑やかなのはパブくらい。そしてちょうどアイルランドのセントパトリックスデーだったので、緑の服や小物を着た人々がパブにあふれており、ライブの音楽をやっていた。踊っている人たちもいた。それを横目に見ながら宿に帰り、ベッドに横になると、連日の観光疲れが出たのか、すぐに眠りに落ちたのだった。

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ウサギ専門のお店。ウサギはそうと言われなければわからない味。クセがなく、肉の繊維がもう少し太い鶏肉といった感じに。料理は可もなく不可もなく、普通。グラスワインをなみなみと注いでくれた。Le Lapin Sauté にて。

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20240318 ケベックシティ1日目午後後半。文明博物館(musee de la civilization)

ケベックシティ1日目午後後半。文明博物館(musee de la civilization)という仰々しい名前だが、中はマルチメディア展示。しかしそれ以上に驚かされたのは、ヨーロッパの歴史的な建造物からなるこの街で、それをはっきりと相対化する展示が当たり前のように行われていたことだ。

展示は入れ替わるのだろうけれど、いまは、ジェンダー問題、ケベックのラップ、ファースト・ネーションズの過去と現在。20世紀カナダの生活を扱ったものもあったし、キッズスペースというか、子どもたちの学びに寄与するような空間設計になっていた。ミュージアムショップはかまぼこ型とでも言おうか、洞窟状に伸びていく感じで、博物館全体のコンセプトと合致している。

ケベックシティの歴史を学ぶたすけにはならないけれど、カナダがどこから来てどこに行こうとしているのかは、なんとなく見えてきた気がする。

(チケット代に子ども割引やシニア割引があるのには驚かないけれど、ここは大人カテゴリーのなかでさらに年齢層によってチケット代が違っており、かなりびっくりしたし、なぜそのようなシステムなのかがわからなかったーー子連れ割引というのならわかるけれど、年齢で、しかも、30歳ではなく34だったか、わりと中途半端なところからの区分だったので、なおさら疑問がつのった。)

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Vivre le monde ensemble(この世を〈共に〉生きる)

 

20240318 ケベックシティ1日目午後中盤。ただ街をぶらつく。

ケベックシティ1日目午後中盤。あまりプランもなく、腹ごなしのためにぶらぶら歩いてみる。そのようなことができるぐらいここはコンパクトな街のなのだ。

まずはレストラン隣の本屋。書籍の比率はフランス語8に英語が2と言ったところ。分類はどこでも似たような感じだけれど、グレーバーの仏訳に店員お勧めのポップがついていたり、気候危機を軸とする書籍、ジェンダー関連の書籍を柱の目立つスペースに並べていたりと、独自の試みを感じる。哲学、詩や戯曲も、これまで見てきた新刊本屋よりも充実していた。

もうひとつ、コミックを専門に扱うところにも入ってみる。半地下の1階が日本の漫画を含むエリア、2階がマーベル。専門外なのでよくわかないけれど、『ベルセルク』や『ヘルシング』の豪華版(これは日本語版も存在するのか?)が並んでいたので、ここはやはりかなり好事家向けのところだろうと思う。BGMがバッハのヴァイオリン無伴奏だった。

ケベックシティは要塞的というか、もともとは城壁に囲まれたところであり、外からの脅威に備えることが前提としてあるため、平坦ではない小高い丘にある。だから街中にはかなりの坂道がある。そして道は、曲がりくねっているとは言わないまでも、理路整然とはしていない。歩いていると方向感覚は狂いがち。

広場のようなところにはモニュメントが立っているのも、街の歴史の深さを思わされるところ。

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