うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

凡庸な作品の饗宴:静岡市美術館、スイス プチ・パレ美術館展

凡庸な作品をここまでまとめて見ることができるというのは、それはそれで貴重な機会。ビックネームの背後には数多の亜流がいたこと、というよりも、いまでは忘れられてしまった圧倒的多数が作り上げた流行があればこそ絵画が市場として存在していたこと、そんなことを考えさせられる。

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どれもこれも、見た瞬間、「ああ、これはセザンヌに私淑してたんだな」とか、「ゴッホに影響を受けたか」とか、「キュビズムのメソッドを使ってみたんですね」とか、悪趣味なレッテル貼りをしてみたくなる(そしてその診断はおそらく的外れではない)。

しかし、キャプションをよくよく見ていくと、これらの絵画の蒐集者の意志のようなものを見逃した自分の至らなさに恥じ入ることになる。アーティスト・グループの周縁的な画家たちの作品に加えて、周縁の周縁に当たるような女性の作品、外国からパリにやってきた異邦人たちの作品が多い。

スイス人実業家の手になるこのコレクションが、どこまでそのあたりをメインストリームにたいするアンチな批判的美学意識として抱いていたのかは、正直、よくわからなかった(美的潮流の史的変遷の説明はあったが、コレクターについての解説はほとんどなかったので)。

けれども、そういうことに思いをめぐらせながら、この手の展覧会にしてはかなり少なめの点数しかない絵画を眺めていると、この凡庸な作品群の向こうにあるものがなにかとても面白いものであるかのように自分を騙すこともできてしまうのだった。