うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

変転する環境への執着(プルースト『花咲く乙女たちのかげに』)

「地位と人間が表裏一体になっているなどと信じているのは、最初に分割不可能に見えただけで、もう分解して知覚することができないと考える者だけである。ある人間の人生を次々に継起する瞬間瞬間で捉えてみると、社会階層のさまざまな段階におけるそれぞれの環境に浸っていることがわかるが、その環境は順繰りに上昇してゆくものとは限らない。人生の別な時期に、ある環境に暮らす人びとと関係を初めて結び、あるいは再び結ぶごとに、そして、その環境のなかで愛されていると感じるたびに、私たちはごく自然にそこに根を下ろして、その環境に執着し始めるものだ。」(プルースト高遠弘美 訳『花咲く乙女たちのかげに』)