うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

特任講師観察記断章。身体の強張り。

特任講師観察記断章。学生たちの身体の強張りをどうしたらいいのか。言語が音であり、音が空気の振動である以上、身体という楽器は息づく呼吸によってときにしなやかに奏でられ、ときにするどく打たれなければならないというのに、学生たちの身体反応はあまりに鈍い。いや、鈍いというより、生理的なところにまで刷り込まれた拒絶によって、ほとんど麻痺状態にあるのだと言うべきだろうか。波打つように寄せては返すバイブレーション的なイントネーションを直感してもらおうと、音楽を聞かせてみるのだけれど、かなりアップテンポでリズミックなノリに意識的にのるまいとするかのように、学生たちはますます身を縮める。体幹を防御するかのように背中が丸まり、体の線が固く細くなる。リズムをカウントしてみてと頼んでみても、まずその誘いにのってこない。まるで教室内で音楽にノルことは厳重に禁止されているかのように。規律訓練の場としての学校というフーコー的なテーゼがふいにこちらの頭に浮かぶ。学期始まって最初の数週間はこの強張りを解きほぐ(unlearn)させる――強張りそれ自体だけではなく、強張りを強いる元凶をもふくめて――ための柔軟体操の時間だ。